伊豆大島火山地質図(第2版) 解説目次
1:はじめに
2:伊豆大島火山の概要
3:伊豆大島火山陸上部の活動史
4:伊豆大島海域の海底火山活動
5:歴史時代の噴火
6:噴火活動の特色 - 防災上の注意点
Abstract
引用文献
前を読む
次を読む
2:伊豆大島火山の概要
2.1 地形
<海底の広域地形>
伊豆大島火山周辺の海底部を含めた広域構造を
第1図に示す.伊豆大島火山は,伊豆小笠原弧の火山フロントに相当する七島(しちとう)・硫黄島(いおうとう)海嶺と呼ばれる概ね南北方向に伸びる海底の高まりの上に位置し,島を形成する火山としては最も北に位置する.七島・硫黄島海嶺上には第四紀火山が配列しており,伊豆大島の東南東約20 kmには海底火山である大室ダシ火山が,また南方約70 kmには三宅島火山が存在する.伊豆小笠原弧の火山フロントはさらに北に伸び,北北西約65 kmの本州上に箱根火山が位置する.一方火山フロント西側の背弧地域には,利島(としま)火山が伊豆大島の南南西約25 kmに位置する.これらの火山は,いずれも活火山である.また利島の北方約6 kmには,海底カルデラと考えられる利島海穴が存在する (Ishizuka et al.,2006).
伊豆大島の北方から北東,そして東方にかけて相模トラフのトラフ軸があり,フィリピン海プレートが北アメリカプレート下に北向きに沈み込んでいる.伊豆大島の北から北東側斜面には,相模トラフへ下る海底谷が発達している.相模トラフはさらに伊豆大島東南東方で伊豆小笠原海溝,日本海溝とともに海溝三重点を形成している.
伊豆大島の西方に位置する伊豆半島には主に安山岩質の多賀火山や天城火山等,第四紀の成層火山が分布すると同時に,玄武岩‒流紋岩質の単成火山により構成される伊豆東部火山群が分布する.この火山群の東部は伊豆大島と伊豆半島の間の海底に分布し,東伊豆沖海底火山群 (葉室ほか,1980) と呼ばれる (
第1図).
一方,伊豆大島の南方から南西側には,七島・硫黄島海嶺から北東‒南西方向に伸びる尾根状の地形が複数見られる (
第1図).利島から高瀬,ひょうたん瀬へと続く高まり,及び新島,神津島から銭洲海嶺へと伸びる高まりである.この中で利島,新島,神津島は活火山であるが,島から離れた高まりの海底部分から採取された岩石は,概ね約200万~580万年前の噴出年代を示す安山岩~デイサイト火山岩である (Ishizuka et al.,2006).このため,この地形は中新世後期から更新世にかけての,伊豆小笠原弧背弧域の火山活動により形成された可能性が高い.
伊豆大島西岸から西‒北西方に伸びる海底の高まりがあり,千波(せんば)瀬及び千波海脚と呼ばれている.比較的起伏の少ない地形を示す.反射法地震探査によると,成層した堆積物層により構成されている (岡村ほか,1999).伊豆大島南東部波浮の沖合には北西‒南東方向に伸びる波浮海脚と呼ばれる高まりがあり,後述のように伊豆大島火山の側火山列からなる.
<陸上地形>
伊豆大島は北北西‒南南東方向に伸びた形をしており,長径約15 km,短径約9 kmである.島の北部から東部,及び南西部には高さ最大350 m (東部) に達する海食崖が発達する.それに対して北西部及び南東部の海岸線は低く,比較的新しい時代の主に側火山からの溶岩流からなる.山頂部にはカルデラがある.西側カルデラ縁は明瞭だが,東側カルデラ縁は不明瞭で形成時期が異なる.両者合わせた全体のカルデラ径は4 kmほどである.カルデラの東~北東側には溶岩流が海岸線に到達し,溶岩扇状地を形成している.西部カルデラの南側には中央火口丘三原山 (標高758 m) があり,山頂火口径は約800 m,さらにその中央には径約300 mの竪坑状火口がある.山腹には主に北北西‒南南東方向の領域に側火山の火砕丘が多数分布する.
