八丈島火山地質図 解説目次
1:はじめに - 2:八丈島火山の概要
3:八丈島火山陸上部の活動史
4:八丈島海域の海底火山活動
5:歴史時代の噴火 - 6:現在の活動
7:噴出物の岩石学的特徴 - 8:噴火活動の特色
引用文献
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5:歴史時代の噴火 - 6:現在の活動
5:歴史時代の噴火
八丈島の噴火記録は,15世紀以降17世紀初頭までに限られ,かつ断片的である(杉原・嶋田,1998).記録に残る噴火はすべて西山で発生している(第2表).1487年(長亨元年)12月7日,1518年~23年(永正十五年~大永三年)には西山山頂からの噴火の記録がある.1605年(慶長十年)10月27日には西山南東山腹の割れ目火口(富士登山道火口列)から噴火し,スコリアを噴出したほか火口列下部から溶岩流が流下したとの記録がある(杉原・嶋田,1998).前述のように,約400年前の炭素14年代を示す噴出物は,西山東南麓では大サリヶ鼻火砕流堆積物とそれに付随する溶岩流,イデサリヶ鼻溶岩流,富士登山道スコリア丘堆積物とそれに付随する溶岩流が,南西麓では船付鼻スコリア丘堆積物などがある.これらの歴史記録と,若い年代を示す噴出物の層序から,西山火山は室町時代~江戸時代初頭にかけて山頂噴火や南東~南西麓での山腹割れ目噴火が頻繁に発生していたことが推測される.その後,確実な噴火の記録はないことから,噴火活動は17世紀初頭以降発生していないと思われる.
6:現在の活動
6.1 地震活動
西山ではマグマの貫入に伴う地震活動が発生している.2002年8月には西山付近で群発地震が発生し,また西山付近を中心とする膨張が観察された.一連の地震活動及び地殻変動の解析から,これらの変動は西山中心部から貫入した岩脈が北東沖に向かって拡大したために発生したと推測される(Kumagai et al., 2003).
6.2 温泉
八丈島で利用されている温泉はすべて東山の南麓の樫立地区・中之郷地区及び末吉地区に存在する.ナトリウム–塩化物泉が主で,源泉温度は40–65℃である.大部分の源泉は動力揚湯である.
6.3 地熱
東山南麓の中之郷地区には,定格出力3,300 kWの地熱発電所が1999年から稼働している.蒸気井は2井あり,それぞれ1,650 m及び960 m深まで掘削されている.