浅間火山地質図 解説目次
1:はじめに - 浅間火山の周辺の地質と岩石
2:第四紀の火山岩類
3:軽石流堆積物 - 軽石流に伴う降下軽石層 - 前掛山
- 東麓の軽石 - 前掛火口
4:1108年の活動と追分火砕流 - 1783年の活動 - 噴火の経過
5:中央火口丘釜山と最近の活動
6:文献(火山地質図での引用)
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5:中央火口丘釜山と最近の活動
1783年の大活動を最後に,前掛山は現在に至るまで,小規模な爆発的噴火をくりかえすだけで,本格的な噴火活動は途絶えている.しかし,前掛山外側火口の中に生じた,中央火口丘である釜山は,現在では前掛山より70m以上高くなっている.釜山火口底の深さは300m以上の振幅で変動する.1912年から13年にかけては火口の深さは最も浅くなり,殆ど0となったが,1950年代前半には300m位の深さになった.1989年の時点では,深さは約180mである.
最近の火山活動は,釜山中央火口内で起る,ブルカノ式噴火と呼ばれる爆発的な噴火が主なものである.この型の活動の継続時間は数分間以下と短く,最大約40万トンの岩塊が,最高200m/sの初速度で火口から投出される.それらは,パン皮状火山弾や,ち密な多面体をなす火山岩塊等として,抛物線を描いて落下する(ただし,直径の小さいものは空気の抵抗によって軌跡が大きく変化する).細粒物質は火山礫,火山灰等として高空に吹き上げられ,通常は西風に送られて東の麓一帯に降下する.このようなブルカノ式噴火の規模は,1108年,1783年の噴火の1000分の1位に過ぎない.噴火のエネルギーの圧倒的大部分は,高温の噴出物によって地表へもち出される熱エネルギーであり,それは噴出物の量にほぼ比例する.