青ヶ島火山 および 伊豆諸島南方海底火山
地質図 解説目次
1:はじめに - 青ヶ島火山
2:青ヶ島火山の地質と活動史 - 天明以前の火山活動
- 1781-1785天明の噴火
3:岩石
4:地下構造探査 - 火山活動の監視・観測
- 将来の活動と災害の予測
5:島弧上の海底カルデラを伴う火山
6:背弧リフト内の火山
- 海底火山活動の監視・観測・将来の活動と災害予測
7:文献(火山地質図での引用)
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4:地下構造探査 - 火山活動の監視・観測 - 将来の活動と災害の予測
地下構造探査
1984年に気象庁が大千代港と青宝トンネルで行なわれた発破を利用して,また1987年に東京都防災会議が島内5ケ所で爆破を行ない人工地震観測を実施し,池の沢火口内の浅所の速度構造を求めた.海上保安庁は1987年に空中磁気測量を行ない,青ヶ島の南方に青ヶ島とは別の磁気異常構造(火山体?)が存在する可能性を指摘した.1988年に東京都防災会議が電気探査を行った.地表から100mの深さまでは数100Ωmという通常の岩石の比抵抗値を示し,それより深部では数Ωm以下と極端に比抵抗が低下する.この低い値は陸水の場合より一桁小さく,明らかに海水の混じった帯水層があることを意味している.天明の噴火前には,池の沢の大池と小池には真水があり,淡水と海水からなるレンズ状地下水の露頭をなしていたと考えられる.しかし,現在の池の沢の地下水はほとんど海水が浸透した状態であることになる.一方,地熱サウナ風呂付近が,高比低抗であるのは深部まで高温であり,海水の浸透が少ないためである.
火山活動の監視・観測
1984甲6月より1台の地震計が向沢取水場内に設置され,連続観測を行なっている.初期微動継続時間が10秒以下の月別平均近地地震回数は数個以下である.1973年と1987年に東京都防災会議が1m深の,1984年に気象庁が20cm深の地中温度を測定したが,地中温度の分布の範囲と状況はほとんど変わらない.20-80℃の領域は,丸山火口,丸山西斜面,池の沢火口底西部および北西部にみられ,80℃以上の領域は地熱サウナ風呂付近に限られる.1987年以降は,青ヶ島村役場の協力を得て,定点の温度観測も行われているが,温度変動は少ない.池の沢以外では,ヘリポートの北西,金比羅神杜の北側の斜面では50-60℃の地温がある.噴気活動も低調で,池の沢火口内壁と丸山周辺に見られるだけである.噴気からは,塩化水素・二酸化硫黄の刺激臭はなく,硫化水素臭もほとんど感じられない.1988年の東京都防災会議の調査では,火山ガスの組成は水が99%で硫化水素は0.5%にすぎない.また,絶海の孤島という特異性を考慮すると,青ヶ島住民による,地熱の異常や地割れなど地変の早期発見が火山活動の予測や必要な観測体制の強化のために重要であることを付け加えておく.
将来の活動と災害の予測
主成層火山主部が成長していたときは定常的に噴火を繰り返していたが,無斑晶玄武岩類の噴火の頃より,サージが島を覆ったり,岩屑なだれが発生し池の沢火口が生じたりし,噴火の間隔や火山活動の様式が大きく変化した.したがって,将来いつどのような噴火を起こすか予測が難しい.最近の噴火では噴出体積は0.001-0.1km3のことが多い.噴火の場所は天明の噴火を考慮すると池の沢が有力であるが,割れ目噴火が海底にまで延びることもありうる.噴火の様式は水蒸気爆発を伴う可能性が十分にある.その規模は天明の噴火程度のこともあるし,鳥島1902年の爆発的噴火程度にまで到ることもあるかもしれない.ただ天明の噴火のように池の沢で噴火が起こるにしても,噴火直前に水位の上昇・塩水化を起こした大池・小池のような地表に通じていた地下水は現在ない.浅所の地下水の状態が天明の頃と異なることに注意しなくてはならない.また,卓越風の方向は一般に西から東であるので,噴煙が高く上がれば降下堆積物は当然東斜面に厚く積もる.火山活動が活発になると崖崩れが多発し港は使えない可能性が高い.