火山研究解説集:有珠火山 by 産業技術総合研究所・地質調査総合センター
マグマ上昇と水位変化についてのイメージ図
このイメージ図は,マグマの圧力が上昇した場合,地殻がどのような範囲で変形するのかを概念的に示したものです.計算には,山科(1986)による計算式を用いています.
まず一番上のAですが,マグマの深さを10kmと想定しています.そして,この深さでマグマの圧力が上昇した場合の様子を示しています.ちなみに圧力の上昇量は,5x106m3の体積増加に相当すると仮定しています.この時,地殻が膨張する範囲,つまり地殻歪変化が伸びである範囲は,マグマを頂点とする逆円錐の形となり(赤い範囲),その底辺の長さはマグマの深さの√2倍となります.図のAでは,マグマの深さが10kmであるため,地表で伸びの地殻歪変化が生じる地域は半径約14kmの円の範囲となります.したがって,マグマが深さ10kmの深さにあり,その圧力が上昇した場合は,半径14kmの範囲において井戸の水位が低下すると考えられます.逆にそれ以外の地域では縮みの地下水変化が予想され,水位の上昇が起きると考えられます.
BとCは,マグマの深さをそれぞれ5km,4kmと仮定しています.つまり,A,B,Cと進むにつれてマグマが上昇する過程を示しています.これに伴って,伸びの地殻歪が起きる範囲(赤い範囲)は狭くなっていき,その範囲から外れた井戸では水位が低下から上昇に転じます.
※地表付近に表示してあるメッシュは,計算される地表の隆起量で,地殻の変形がイメージしやすくなるように表示してあるものです.実際には,垂直方向だけではなく水平方向の地殻変動も生じると考えられますが,本図ではその変動量は示しておりません.地殻の膨張や伸縮は,垂直方向と水平方向の両方の地殻変動を総合して計算されるため,メッシュで示した隆起量は地殻の伸び縮みの分布を示すものではありません.
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