火山研究解説集:有珠火山 by 産業技術総合研究所・地質調査総合センター

有珠火山歴史時代噴出物中のtype-A斜長石の累帯構造(Tomiya and Takahashi, 2005).横軸は斑晶縁(リム)からの距離,縦軸はアノーサイト組成 (An).

1663年低温マグマ中では斑晶の全域で均質(An≒43)である.それ以後の噴出物中では,斑晶内部(コア)は1663年のものと共通であるが,リム付近で組成が増減している.特に,1853年まではコアのすぐ外側でAnが急減する特徴が全ての噴出物中で見られ,それよりリム側の厚さは時間とともに厚くなる傾向がある.An急減帯 (SZ: sodic zone) は,1943〜45年以後は汚濁帯 (DZ: dusty zone(※)) に変化していく.これらの事実は,type-A斑晶が共通して1663年低温マグマを起源としていること,SZないしDZからリム側は1663年以後に形成された部分であること,1663年から2000年までずっとマグマ溜まりが存在し続けていることを示す.

(※) 汚濁帯: 低An斜長石が分解し,高An斜長石とメルトなどからなる微細で複雑な組織に変化した部分.高温でより苦鉄質なマグマと接触すると生ずる.

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