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岩手火山地質図 解説地質図鳥瞰図
7:火山活動の監視体制 - 8:火山防災上の注意点

7:火山活動の監視体制

 岩手火山では1998年の火山活動に対応して,多くの機関により各種の観測が実施されてきたが,2003年以降の活動の沈静化に伴い観測体制の再編成が検討されている.

 地震・火山性微動観測は,気象庁・東北大学・岩手県により実施されている.地殻変動については,GPS観測が気象庁・国土地理院・東北大学・産業技術総合研究所,光波測距観測が国土地理院によって実施されている.また,火山監視カメラが,気象庁および国土交通省岩手河川国道事務所により設置されている.このほか,東京工業大学は大地獄谷周辺での火山ガス(SO2, H2S)濃度,岩手県は姥倉山-黒倉山稜線部の地中温度のモニタリングを行っている.


8:火山防災上の注意点 

 過去数十万年にも及ぶ岩手火山の噴火の歴史を見た場合,その噴火様式および推移は多様であり,将来予測は容易ではない( 第5図).比較的可能性の高い噴火活動としては,東岩手火山ではマグマ噴火,西岩手火山では水蒸気爆発が予想される.東岩手火山での噴火は薬師火口で発生すると考えられるが,山体斜面に新たな火口(列)を開く可能性もある.噴火様式としては火山灰や火砕サージの噴出,溶岩流出やスコリア丘の形成等が予想されるが,火山活動の進行とともに遷移する可能性もある.活動期間は,主要な噴火が数日間で終了する可能性もある一方で,小規模な噴火を長期間にわたって断続的に発生する可能性もある.

 積雪期にはマグマ水蒸気爆発や融雪型土石流が発生する危険性が表れるなど,災害要因が季節によって変化する為,同一の噴火シナリオに対して季節に応じた複数の防災対策を想定する必要がある.また,薬師岳火山の山頂部には安定角を超えている部分があり,噴火によって放出された火山灰やスコリアは安定して定置できず,崩れ落ちる危険性がある.

 西岩手火山における水蒸気爆発は,比較的噴火規模は小さいと予想されるが,近傍の登山道には噴石が落下する危険性がある.また大規模な水蒸気爆発では火山灰は東麓部まで到達し,土石流が誘発される危険性がある.

 また,東岩手火山におけるマグマ活動が,西岩手火山及びその西部での水蒸気爆発の可能性を含めた地熱活動や,周辺域での地震活動の活性化をもたらす可能性に注意を払う必要がある.


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