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第四紀火山>活火山>阿蘇
阿蘇火山地質図 解説地質図鳥瞰図
1:まえがき - カルデラの地形 - 阿蘇火山の生い立ち

まえがき

 阿蘇火山は日本有数の活火山である.中岳火口から絶えず噴煙を上げ,時には噴火して人命・施設や農林業に被害をもたらす.この火山は南北25km,東西18kmの大きい凹地(カルデラ)とその中にある中央火口丘群からなり,30万年にわたる複雑な活動・成長の歴史を経て今日に至ったものである.阿蘇国立公園に含まれるこの地域は火山を中心とした美しく雄大な景観に恵まれ,訪れる観光客は年間500万人に上る.一方,面積380km2のカルデラは3町3村を含み,人口50,000人,国鉄2線と国道数本が通過する生活の場であり,この火山の噴火予知と防災はきわめて重要である.この火山地質図は阿蘇火山の地質についてのこれまでの研究結果をまとめたもので,今後の研究、噴火予知・防災や観光・地域開発の資料として利用されることを願っている.


カルデラの地形

 カルデラは急崖に囲まれた大きい凹地である.南北に長いカルデラ内の,やや南よりに中央火口丘群が密集しているので,カルデラ内の低地も南北に2分される.北の広く平坦な谷を阿蘇谷,南の谷を南郷谷という.南郷谷を西に流れる白川は,カルデラの西縁で阿蘇谷の水を集めた黒川を合わせ,立野を通って西方熊本平野へ流下する.逆に,熊本から阿蘇へ向かう国鉄や国道などの交通路も,この峡谷沿いにカルデラ内に入る.

 阿蘇谷の北側,カルデラの北壁は高度差300m程度で,その上面は平坦である.一方,南郷谷の南側,カルデラ南壁は高度差300-700m,深い谷と尾根が交互し,北壁とは対照的な彫りの深い地形を作っている.

 カルデラの外側の地形は,東と北側は火砕流によって作られたきわめて緩傾斜(1-2°)の台地がひろがる.また,南と西側は古い火山の山腹で10°前後の斜面からなり,その外側に阿蘇火砕流の台地が接している.


阿蘇火山の生い立ち

カルデラができるまで

 阿蘇火山の活動は約30万年前に始まった.現在の阿蘇カルデラが作られたのは7-8万年前であるが,30万年から7,8万年までの間に4回の大噴火があった.これらの噴火と噴出物を古い方からAso-1,Aso-2,Aso-3,Aso-4と呼んでいる.それぞれの噴火の時期には大量の火山灰・軽石が放出されて,はじめは高空に吹き上げられて東方に降り積もり(降下火砕物),次いで火砕流として四方に流れひろがった( 第1図).これらの噴火は現在行われている火山活動の尺度からは想像を絶するもので,たとえばAso-4火砕流は阿蘇火山の周囲に広い台地を作り,さらに谷沿いに九州島の東・北・西の海岸に達し,一部は海を越えて天草下島や山口県の秋吉台にまで分布している.

 カルデラの現在の形ができたのは7,8万年前のAso-4噴火の直後だが,この1回の噴火だけでカルデラが出来たのではなく,Aso-1直後にカルデラが生じ,その後の大噴火ごとにそれが次第に拡大されたものと思われる.4回の大噴火の間にはより小規模の火山灰・軽石の放出が繰り返された.Aso-1とAso-2の中間には溶岩も流出した.


中央火口丘群の形成-後カルデラ火山活動-

 Aso-4火砕流の流出によって生じたカルデラの中に,あまり時間をおかずに次の火山活動が始まり,中央火口丘が次々に作られた.中央火口丘は独立の山体として17数えられるが,初期のものは後期の噴出物に覆われて見えなくなっていると思われるので,総数はもっと多かったのであろう.これらの中で,中岳火山だけが現在も活動を続けている.

 後カルデラ火山活動では玄武岩から流紋岩までの各種のマグマが噴出し,その結果,岩質によって火山の構造・形体もさまざまである.1火山群の中での岩質と火山形態の多様さはまことに特徴的である.現在わかっている各火山の形成の順序を 第1表に示す.

 火山活動が続く一方で,水がたたえられてカルデラ内に湖があった時期が少なくとも2回ある.古い方は南郷谷西部の久木野層を堆積させた湖であり,新しい方は阿蘇谷を埋積して,現在の平坦面を作った湖である.


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