簡易版

地下構造可視化システム
地下構造可視化システムは, 活断層の地下構造として3次元的な物性値 (現時点では弾性波速度のみ) の分布を「見る」ためのシステムです.地殻や上部マントルを概観するような大スケールの構造を扱います.そのようなスケールでは穴を掘って実際に見るわけにいかないので, ここで言う「見る」 (=可視化) は, 自然地震の記録を用いた地震波トモグラフィによる地下構造の推定イメージを図示することを指しています.
地震波トモグラフィは地球のCTスキャン
一般の方々には「トモグラフィ (Tomography) 」とは聞きなれない言葉かもしれませんが, 病院のCTスキャンのようなものを想像すれば良いと思います (そもそも, CTとはComputer Tomographyの略なのです).病院のCTスキャンでは体の周囲で多方向からX線を飛ばし, それを多数の受信点で受けることで体内の構造を知ります.地球のトモグラフィでは, X線の代わりに地震波が使われます.X線の射出口は地震震源, 受信点は地震観測点ということになります.
1990年代半ば以降, 日本全国に密な地震観測点網が設置されました.その観測網のデータが蓄積されてくると, 研究者は地殻の詳細な構造や日本列島を俯瞰するような概観的な地下のイメージを得るために, 地震波トモグラフィを実施しました.
避けられない問題
病院のCTスキャンでは診たい患部を取り巻くようにX線の射出口と受信点がありますが, 地震波トモグラフィでは地震観測点が「患部」の片側の地表にしかありません.結果として, 地下構造のイメージは, 度の強いメガネをかけたようにボワッとしてしまいます.解析者が期待する分解能 (トモグラフィ解析に用いる格子間隔程度) に比べて, 現実にはずっと低い分解能しか得られないこともあります.またそういう状況では, トモグラフィ解析に先立って仮定される地下構造 (初期モデルと呼ばれます) や解析手法の相違に起因して, 得られるイメージは解析者ごとに少しずつ異なってきます.
このシステムの目的
このシステムは, 活断層の活動に関わる大局的な地下構造を理解するための基礎情報として, 多数の地震波トモグラフィ解析結果を手軽に可視化・閲覧するために作られました.この目的に沿うため, トモグラフィの解析結果だけでなく震源データや地形, 地質, 重力異常などの地質情報や活断層, 火山の分布等も併せて表示するようにしました.地球科学・工学の専門家や理科の先生, 学生などアマチュアの研究者まで広く利用していただき研究の交流と発展に貢献できれば幸いです.