磐梯火山 - 赤埴(あかはに)—櫛ヶ峰火山噴出物（Ba） -

地質各節

赤埴(あかはに)—櫛ヶ峰火山噴出物（Ba）

　山元・須藤（1996）の古期山体噴出物のうち，1888年崩壊壁で良く追跡される不整合面（八島，1981；三村，1988；井口ほか，1995）よりも上位の火山噴出物である．

地層名　八島・千葉（1982）の赤埴山火山岩類・櫛ヶ峰火山岩類，三村（1988）の赤埴火山体・櫛ヶ峰火山体による．

模式地　耶麻郡猪苗代町の字後磐梯山の1888年崩壊壁上部．

分布・構造　赤埴山を頂点に南東へ向かって広がる火山体と櫛ヶ峰を頂点として北東に広がる火山体，それに大磐梯山の西にある長さ3 km，幅500 m程度のやせ尾根を構成している．守屋（1988）が示したように残存する火山斜面から一つの円錐形の火山体が復元可能である．

層序関係　後磐梯火山噴出物を不整合で覆い，小磐梯火山噴出物・大磐梯火山噴出物に不整合で覆われる．

層厚　1888年崩壊壁で150 m前後の厚さを持つ．

岩相　櫛ヶ峰北西の1888年崩壊壁には，後磐梯火山噴出物を不整合で覆う三枚の厚い直方輝石単斜輝石安山岩（一部はかんらん石含有）溶岩流が露出している（第7図）．また，赤埴山上部の斜面は，火山弾に富む溶結した層厚10 m以上で赤色の直方輝石単斜輝石安山岩火砕物（猪苗代町赤埴林道の標高1,200〜1,100 m区間に露出）からなり，斜面の中腹で舌状ローブ地形を持つ火砕性溶岩流に移行している．大磐梯山の西尾根では，翁島岩屑なだれの崩壊壁に，安山岩溶岩流に挟まれて直方輝石単斜輝石安山岩の厚い降下軽石堆積物が露出している．
　本火山噴出物の岩石は，斑晶量50〜30%でインターサータル〜ハイアロオフィティック組織の石基を持つ直方輝石単斜輝石安山岩またはかんらん石含有直方輝石単斜輝石安山岩からなる．斜長石と直方輝石・単斜輝石の多くが集斑晶をなし，斜長石斑晶には汚濁帯を持つものが多い（第9図）．岩石学的特徴は下位の後磐梯火山噴出物とほとんど同じで，全岩化学組成でも下位と区別できない（山元，2011）．

年代　後述するように，本火山噴出物最上部の噴火年代は約25万年前とみられる．

第9図　赤埴−櫛ヶ峰火山噴出物の薄片顕微鏡写真
直方輝石単斜輝石安山岩溶岩．斜長石斑晶（Pl）は，汚濁帯を持つものが多い．また，単斜輝石（Cpx）・直方輝石（Opx）と伴に集斑晶を形成する．石基はハイアロオフィティック組織を持つ．写真の横幅は，6 mm．オープンニコル．福島県猪苗代町見祢（北緯37度35分1秒，東経 140度6分28秒）．

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磐梯火山 Bandai San

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