津波についての知識
津波堆積物とは?
津波によって海底あるいは海岸の堆積物が削り取られ,それが津波とともに運ばれて別の場所に堆積した砂泥や石のことを「津波堆積物」と呼びます.湿地や湖沼など,普段は静穏な環境下で少しずつ堆積している地層(泥炭層や泥層)の中に,砂の層として保存されることが多いことがわかっています.津波堆積物のたまった年代を推定することで,過去の津波の発生時期や繰り返し間隔を解明することができます.さらに平野などで広範囲に津波堆積物の分布を探ることで,過去の津波の浸水域や規模を把握することができます.ただし,津波の浸水範囲については,津波堆積物の分布と一致しないことが知られており,その評価を慎重に行う必要があります.
私たちは,津波が残した地質学的な証拠である津波堆積物に注目して調査・研究を行ってきました.海溝型巨大地震に伴って発生する低頻度の巨大津波による災害の危険性は,現在では2004年スマトラ沖地震や2011年東北地方太平洋沖地震によって広く認知されるに至りました.このため,各地における海溝型巨大地震の切迫性や規模の予測を早急に行うことが求められています.しかしながら,数百年単位の再来間隔を持つ海溝型地震についての器械観測や歴史上の記録は非常に少なく,その実態解明のためには地質学的な手法によって履歴を明らかにするしかありません.
津波堆積物のでき方
Depositional process of tsunami deposits