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Photo of the volcano
東側から見たワイナプチナの火口.火口縁には白っぽい1600年噴火の堆積物層が見られる.
作成・引用: Oscar González-Ferrán, ライセンス: CC BY-NC 4.0

ワイナプチナ
1600年噴火

Huaynaputina 1600 Eruption
  • 発生地域: ペルー
  • アンデス中部
  • 噴火規模: VEI 6
  • ※VEIはスミソニアン博物館GVP (Global Volcanism Program)による

    4.6–4.95 km3 DRE

    最高噴煙高度: 27-35 km

  • マグマ組成: 流紋岩質
  • 噴火トレンド: 多峰型?
火山の位置(厳密な火口の位置を示すものではない).

主要な噴出物等

  • 降下火砕物
  • あり

  • 火砕流
  • あり

  • その他
  • 4.6–4.95 km3の噴出物があったにもかかわらずカルデラは形成されなかった.噴火でもたらされた噴出物により,湖が堰き止められ,泥流が発生した.泥流は途中で村々を押し流し,120 km先の太平洋まで到達した.

外部リンク:

米スミソニアン博物館 Volcanoes of the World: Huaynaputina

噴火の全体的な推移

カーソルを合わせると詳細が表示される.火山活動の強度を示す縦軸にとったVUCの詳細は【こちら】

前兆現象・噴火開始

1600年噴火の前には前兆的な噴火はなく,少なくとも数世紀は爆発的なイベントは発生していない.

ワイナプチナの火山活動を鎮めるために供え物を携えて登山していたインディアンらの証言から,噴火前の数十年間は噴気活動は穏やかであったと考えられる.

噴火推移

Thouret et al. (2002)は堆積物の観察や史料により噴火推移をまとめている.また,Petit-Breuilh Sepulveda (2019)は史料にあるArequipa (火口から56 km 北西)での証言をまとめている.2月19日の夕方に噴火が発生し,急速に噴煙が発達していったとみられる. 19日の18時から4時間程度がピークであり,夕方の町は暗闇に包まれた.2月20日の夜遅くに噴火活動は弱まった.それから2月22日までは降下軽石や降灰のため,Arequipaは暗闇に包まれた.この時点でテフラ層厚21 cmであった.2月23日–24日は小康状態であった.その後の2月25日から再び降灰・地震が急速に増加し,2月28日までは激しい活動が続いた.この間大規模火砕流が発生したとみられる.2月29日–3月3日は,細粒の降灰がありつつも小康状態となったが,3月4日から多量の降灰と地震活動が再開した.このときは,大規模噴火の後に噴出していた火山灰流が,広域に拡散していたと解釈されている.多量の火山灰の拡散により,視界不良が続いていたことで,噴火活動終息は不明瞭である.3月6日頃に終息したとみられるが、降灰は3月15日まで続いていたと報告されている.火山灰の二次移動による大気汚染で,9か月間空は霞んでいた.

日付時刻継続時間(h)VUC内容出典
1600/02/14約48時間2西北西に75 km離れたArequipaで有感地震Petit-Breuilh Sepulveda (2019)
1600/02/18 19:002振動を感じるようになるPetit-Breuilh Sepulveda (2019)
1600/02/18 21:00約3.0時間2地震の規模と頻度が増し、崩れる壁も出現。人々が屋外に避難。地鳴りが夜を通して聞こえた。Petit-Breuilh Sepulveda (2019)
1600/02/19約17時間2群発地震、時折大きな音を伴った激しい地震Petit-Breuilh Sepulveda (2019)
1600/02/19 17:006Arequipaや周辺の町々は暗闇になり、稲光、降下軽石、降灰Thouret et al. (2002); Petit-Breuilh Sepulveda (2019)
1600/02/19 22:007Ica (580 km 北西)、 Cuzco (350 km 北)、Arica (200 km 南 チリ)、La Paz (325 km 東 ボリビア)でも降灰Thouret et al. (2002)
1600/02/206降灰、稲光、地震が発生し、あたりは暗闇に包まれていた。南東の湖が噴出物により堰き止められ、28時間後に泥流発生。Thouret et al. (2002)
1600/02/20 14:00約48時間6状況は悪化し、すれ違う人を認識できなくなるほど、さらに暗くなる。Petit-Breuilh Sepulveda (2019)
1600/02/20 16:00約3.0時間6視界が少し回復する中、火砕流の発生が目撃される。給水不能。降灰層厚7-8 cm。Petit-Breuilh Sepulveda (2019)
1600/02/23約24時間4降灰と地震は続くものの、視界が徐々に回復。Petit-Breuilh Sepulveda (2019)
1600/02/24約30時間3地震は続くものの、降灰はなく、視界が良好になる。Petit-Breuilh Sepulveda (2019)
1600/02/25約72時間3降灰、視界不良、稲妻、地震が爆発的に増大。Petit-Breuilh Sepulveda (2019)
1600/02/26約24時間6激しい有感地震で、Arequipaの大聖堂や家々が倒壊。火砕流が発生。多量の降灰、地震、爆発音。Petit-Breuilh Sepulveda (2019)
1600/02/27 16:006完全な暗闇に包まれる。爆発的な活動がさらに増大する。Petit-Breuilh Sepulveda (2019)
1600/02/27約24時間6南東側の湖が新たに堰き止められ、遅くとも3/7か3/24に決壊した。Thouret et al. (2002)
1600/02/284大きな爆発音。Petit-Breuilh Sepulveda (2019)
1600/02/28 17:00約7.0時間4降灰があるものの、視界が良くなる。Petit-Breuilh Sepulveda (2019)
1600/02/29約24時間4日が差すようになるが、細粒の降灰あり。Petit-Breuilh Sepulveda (2019)
1600/03/01約24時間3日が差すが、細粒の降灰あり。Petit-Breuilh Sepulveda (2019)
1600/03/02約24時間4日が差すが、細粒の降灰あり。強い爆発的噴火が発生。Thouret et al. (2002)
1600/03/03約32時間4日が差すが、細粒の降灰あり。強い爆発的噴火が発生。Thouret et al. (2002)
1600/03/04約16時間4明け方は晴れていたが、多量の灰が降る。インディアンの村が火砕流で埋没した。Petit-Breuilh Sepulveda (2019)
1600/03/05約24時間3多量の降灰と群発地震。Thouret et al. (2002); Petit-Breuilh Sepulveda (2019)
1600/03/06約24時間3細粒の降灰と群発地震。Thouret et al. (2002); Petit-Breuilh Sepulveda (2019)
1600/03/07約9.0日間3細粒の降灰。Thouret et al. (2002); Petit-Breuilh Sepulveda (2019)
噴火推移のイベント一覧.時間は全て現地時刻.

長期的活動推移

Huaynaputinaはアンデス中部にある火山である.通常の成層火山とは異なり,平坦な高原に火口が分布している.先の氷河期に溶岩流や溶岩ドームが形成されている.一方で,完新世には1600年噴火と同じ場所で爆発的な噴火が2回あり,降下火砕物や火砕流が発生したが,1600年噴火以前は少なくとも数世紀は静穏であった.

引用文献

Thouret, J.-C., Juvigne, E., Gourgaud, A., Boivin, P., Davila, J., 2002. “Reconstruction of the AD 1600 Huaynaputina eruption based on the correlation of geologic evidence with early Spanish chronicles.” J. Volcanol. Geotherm. Res., 115, 529-570. https://doi.org/10.1016/S0377-0273(01)00323-7

Petit-Breuilh Sepulveda, M. E., 2019. “The value of historical documents for risk reduction: The 1600 Huaynaputina eruption (Peru).” Ann. Geophys., 11 (62), 1-9. https://doi.org/10.4401/ag-7673