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第四紀火山>活火山>雲仙
雲仙火山地質図 解説地質図鳥瞰図
1:はじめに - 雲仙火山周辺の地質 - 雲仙火山の概要

はじめに

 九州西部に位置する活火山である雲仙火山は,1990年11月に最新の噴火活動を開始した.1991年6月の火砕流による多数の犠牲者をはじめ,家屋や農産物に多大の被害を与えており,現在もなお多くの人々が避難生活を余儀なくされている.また約200年前の1792年には,島原市街背後の眉山が崩壊し,死者・行方不明者約15,000人にのぼるわが国火山災害史上最悪の被害をもたらした.雲仙火山周辺は風光明媚な温泉地であり,多くの観光客が訪れている.また温暖な気侯を生かしての農業生産も活発である.このように雲仙火山では,人々の生活と火山活動との関わりが深く,火山噴火予知と防災は極めて重要である.

 この火山地質図は,雲仙火山の地質についての研究成果をまとめたものであり,今後の噴火予知・防災や観光・地域開発の資料として利用されることを願ってやまない.なお,火山活動の活発化により一部地域については,空中写真判読によって地質図を作成したことをお断りしておく.引用文献については本文中ではいちいち記さず,巻末にまとめて列記した.


雲仙火山周辺の地質

 雲仙火山の基盤は,古第三紀から第四紀更新世中期の堆積岩類や火山岩類であり,島原半島南部に露出している.地質図内には,南島原火山岩類に属する 塔ノ坂安山岩が,南西部に広がっている.塔ノ坂安山岩は,輝石安山岩の 溶岩からなる約50万年前の古い火山体の一部である.


雲仙火山の概要

 雲仙火山は島原半島の中央部の普賢岳を中心とするいくつもの山々の総称であり,周囲の裾野も含めて東西20km,南北25kmの広大な範囲を占めている.火山体の中央部には東西性の断層群からなる 雲仙地溝があって,現在も南北に拡大し沈降し続けている.

 雲仙火山は,高岳,九千部岳など侵食が進んだ古期の火山体と,普賢岳,眉山,妙見岳,野岳などの火山原面を比較的よく残す新期の火山体とからなる.これまでに前者から50万年から10数万年の,後者からおよそ10万よりも若い K-Ar年代測定法 による年代値が得られており,両者の間には数万年程度の休止期があったらしい.雲仙火山全体の総噴出物量は溶岩に換算して約44km3にのぼるが,古期噴出物が36km3と,新期噴出物の8km3に対して圧倒的に多い.すなわち雲仙火山の骨格は古期にできていたといえる.新期の活動の産物は,形成順に野岳火山,妙見岳火山,普賢岳火山及び眉山火山に分けられ,各火山はさらにいくつかの溶岩や火砕流堆積物などに細分される( 第1図).

雲仙火山の岩石:雲仙火山は,粘性の高い安山岩から デイサイト の溶岩や 火砕岩 からなり,すべての岩体に 斑晶 として角閃石が含まれている.多くの岩石は灰色-灰白色で,大型(数mm以上)の斜長石と角閃石の斑晶が目立ち,肉眼的には異なる岩体間でもよく似ており織別は必ずしも容易ではない.斑晶鉱物として,角閃石,斜長石のほか,しばしば石英,黒雲母,斜方輝石,単斜輝石,かんらん石,鉄鉱物を含む.岩石の化学組成は,SiO2含有量が57-67%の範囲にあり,日本の火山岩の平均的な組成よりもK2Oに富み,MgOに乏しい.代表的な岩石の化学組成の分析値を 第1表に示す.


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