火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)


火口底の地表面温度分布(1997年4月17日測定)

上の図は,1997年4月17日に南西の火口縁から撮影した山頂火口内の写真で,下の図は,同時に同じ場所から赤外熱映像装置(AGEMA Thermovision 470)で測定した地表面温度分布図です.赤外熱映像装置の検出波長は2-6μmで検出温度は-20℃から500℃です.空間分解能は3.9mradで,火口底の対象物として,0.4~1.4mの大きさの温度異常が検出可能です. 火口内に竪穴状火孔が生じ,それが徐々に拡大している時期に対応し,写真の火口中央部にその火孔が認められます(詳しくは→詳細版2. 火山活動最近の火山活動の推移へ).写真ではわかりませんが,竪穴状火孔からは高温の火山ガスが噴出しています.

地表面温度分布図を見ると,地表面温度が約20℃より高温な領域が火口原内全域に広がっていることがわかります.この観測においては何も異常がないときの温度が20℃とみなされるので,火口原全体が温度異常を示していることになります.

また,竪穴状火孔からは100℃以上の高温の火山ガスが放出されていることが温度分布図からわかります.竪穴状火孔の周辺には約50℃より高温な領域が部分的に広がり,約100℃より高温な場所が,火口底および火口壁に点在しています.地表面温度が100℃以上であることを示す場所には,最高で850℃に達する高温噴気孔が点在しており,これらの場所を図中に矢印で例示的に示してあります.

Matsushima et al. (2003)のFig.4を改変.