火山研究解説集:薩摩硫黄島 (産総研・地質調査総合センター作成)


硫黄岳溶岩ドームの構成

硫黄岳の山体は,流紋岩質の厚い溶岩ドーム,溶岩流とそれに伴う粗粒な流紋岩質火山角礫岩からなり,それを降下軽石・火山灰,火砕流堆積物からなる硫黄岳テフラが覆っています.このうち,火山角礫岩は,岩石種は単一の流紋岩溶岩であること,層理を伴い,逆級化構造を持つこと,傾斜角は安息角に近いこと,角礫には冷却節理を持つものがあること,などから,熔岩ドーム形成時に溶岩ドームから崩落して生成した初生の崖錐(転動火山角礫岩)と考えられます.

硫黄岳を構成する溶岩および転動角礫岩は,遠望した被覆関係から,図のように,大きく5つのユニットに分類できます.

最も古いユニット(I-t)は硫黄岳古期転動堆積物で主に硫黄岳東側山体下部を占めます.硫黄岳古期転動堆積物には大きな浸食谷が発達し,それを覆う硫黄岳古期溶岩(I)が尾根部分に残っています.この溶岩は古岳付近から流出し,古期転動堆積物を形成しつつ流出したものと考えられます.なお,前野・谷口(2005)は硫黄岳南岸の硫黄岳古期転動堆積物の下位に複数の溶岩流を記載していますが,分布が狭いため薩摩硫黄島地質図には示していません.

硫黄岳西側山麓には硫黄岳西溶岩(II)が分布し,展望台付近の平坦部と前縁に急崖を持つ厚い舌状の溶岩流地形を作っています.

硫黄岳西溶岩(II)と古期転動堆積物(I-t)を覆って,山頂部を構成する硫黄岳新期溶岩(III)とその初生崖錐である硫黄岳新期転動堆積物(III-t)が分布しています.

古期噴出物が東側,新期噴出物が西側に偏った分布を示しているので,新期噴出物の活動前に硫黄岳西側山体が失われていた可能性があります.


この地図の作成には,カシミール3D(DAN杉本氏作,http://www.kashmir3d.com/ )を使用しました.

この地図の作成に当たっては,国土地理院長の承認を得て,同院発行の2万5千分の1地形図,数値地図25000(地図画像) 及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用したものである.(承認番号 平19総使,第543号)

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