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データの表記法

ID表記
火山名
噴火イベント名称
噴火堆積物名称
年代
噴火様式 噴火様式の詳細 堆積物の種類 岩質 給源
噴出量 噴火マグニチュード VEI(火山爆発指数)

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ID表記

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 このデータ集では,活火山,噴火イベントおよび噴火堆積物にID番号をつけています.活火山IDは数字3ケタで表されます(例えば,001,002‥‥).これは,気象庁による「日本活火山総覧(第3版)(2005)」の火山番号(1〜108)に対応しており,2005年以降に活火山に認定された火山については109以降の番号を付けています※.噴火イベントIDは,噴火イベントを起こした活火山のIDとハイフンで結んだ数字4ケタ(例えば,001-0010)で表記され,過去の噴火イベントほど数字が増加します.噴火堆積物IDは,その堆積物がもたらされた噴火イベントのIDとハイフンで結んだ数字3ケタ(例えば,001-0010-010)で表記され,より下位の堆積物ほど数字が増加します.

※ID番号は気象庁の「日本活火山総覧(第4版)(2013)」による番号とは対応していませんので,ご注意ください.

ID表記の例(十和田火山)

項目種類 項目名
ID表記
火山名 十和田 022
 噴火イベント名  噴火エピソードA 022-0010
  噴火堆積物名   御倉山溶岩ドーム 022-0010-010
  噴火堆積物名   毛馬内火砕流 022-0010-020

火山名

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 活火山の名称は,気象庁が2013年3月に出版した「日本活火山総覧(第4版)」に従っています.


噴火イベント名称

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 このデータ集ではそれぞれの噴火イベントに名称をつけています.歴史記録によって噴火発生年が明らかなものについては,例えば有珠山の「2000年噴火」や「1663年噴火」のように,「噴火発生年(西暦)+噴火」と名付けました.歴史記録が無いものについては,例えば岩手山の「生出スコリア噴火」,鳥海山の「猿穴溶岩噴火」,安達太良山の「Ad-NT1噴火」のように,「噴火堆積物名称+噴火」と名付けました.ただし,歴史記録も無く,噴火堆積物名も与えられていないものについては,名称を与えるのは困難であるため,現時点では「(イベント名未定)」と記してあります.

  一方,十和田火山の「噴火エピソードA」(Hayakawa, 1985),有珠火山の「先明和噴火」(中川ほか,2005)などのように,従来の研究によって噴火イベント名が与えられているものについては,それらの名称を用いました.噴火を伴わなかった山体崩壊イベントについては,厳密には“噴火イベント”ではないことから,括弧書きで「(山体崩壊イベント)」と記してあります.また,海底火山における海水変色イベントについても.括弧書きで「(海水変色イベント)」と記しました.


噴火堆積物名称

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 これまでの研究によって定義された噴火堆積物の名称を記しています.また,厳密には“噴火”ではありませんが,山体崩壊イベントによる崩壊堆積物や泥流堆積物の名称も「噴火堆積物名称」の欄に記しています.


年代

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 このデータ集では,噴火イベントの発生年代を「ka」「西暦」および「和暦」で表記しています.「ka」は「1000年前」を意味し,1 kaは1000年前となります.「ka」は西暦2000年を0kaとして示しているため,2001年以降の噴火イベント年代は-(マイナス)で示されることになります.例えば,西暦2004年は「-0.004ka」と表記されます.

 「西暦」は年と月日,「和暦」は年のみを表記しています.西暦の表記法については,早川・小山(1997)による提言に従い,1582年10月4日まではユリウス暦,その翌日の1582年10月15日以降は現行のグレゴリオ暦で表記しています.

 1回の噴火イベントは数年間にわたって長期的に継続する場合があります.また,報告されている噴火年代そのものがある年代幅で示されていたり,不確実性を伴う場合があります.それらを表現するために,以下の記号を用いました.

年代
説明
A B A年からB年までの間,継続して起こった一連の噴火イベント
A ←→ B A年からB年までの間のどこかで起こった噴火イベント
A
A年以降に起こった噴火イベント
A
A年以前に起こった噴火イベント
A ?
A年に起こったらしいが,他の年代の可能性もある噴火イベント

 このデータ集では,年代を決定した根拠についても記してあります.年代決定根拠とその説明を以下に示します.

年代決定根拠 説明
記録 近代火山観測により噴火が記録されているもの.また,古文書などにより噴火年代が記録されているもの.古文書文献名がわかるものについては括弧内に記した.
層序 年代が判明している堆積物との層序関係によって推定された噴火年代を指す.該当する噴火堆積物の前後の土壌層の厚さから推定された噴火年代も含む.
14C年代(暦) 14C年代測定法による放射年代値をを暦年代に較正したものを指す.14C年代は,過去における自然放射能の増減の影響を受けるため,実際の暦年代との間にずれが生じる.このずれを補正するために,年輪年代データ等に基づいて14C年代から暦年代への較正プログラムが開発されている.その方法を用いて較正されたものを,較正暦年代と呼ぶ.本データ集では,14C年代と較正暦年代が両方報告されている噴火イベントについては,較正暦年代を採用して収録している.14C年代が報告されていても暦年較正が行われていない場合は,本データ集で暦年較正を行った.使用した較正プログラム及び較正曲線については備考欄に記載した.なお,暦年較正を行う際には,あらかじめδ13Cなどの値を用いて炭素同位体分別の補正を行う必要がある(中村,2001).そのため,補正が行われていない場合は本データ集で補正を行った.δ13Cが測定されていない場合には,試料の種類に応じて典型値を用いて同位体分別を補正し,それを暦年較正した.δ13Cの典型値はStuiver and Polach (1977) を参考にして,炭化木片や木材の場合は-25,土壌の場合は-27とした.
K-Ar年代 カリウム-アルゴン年代測定法による放射年代値を指す.
考古学遺物 考古学的な遺物(遺跡,土器,石器など)と噴火堆積物の関係から推定された噴火年代.
地形 火山地形の保存程度から推定された年代.または,地形の形成時期の新旧から推定された年代.

噴火様式

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 マグマ関与の有無を基準に,噴火様式を「水蒸気噴火,マグマ水蒸気噴火,マグマ噴火」の3つの区分で示し,噴火様式が不明のものは「?」と示しました.1回の噴火イベント内で時間とともに噴火様式が変化する場合は,矢印を用いて「水蒸気噴火→マグマ噴火」のように示しました.なお,山体崩壊イベント,泥流発生イベント,海底火山における海水変色イベントについては,括弧書きで「(山体崩壊)」「(泥流発生)」「(海水変色)」と示しました.

 噴火様式の区分は,基本的には研究論文・観測報告等による記載・考察に従っています.噴火様式が明言されていない場合には,「マグマ物質が認められない」と報告されているものについては水蒸気噴火,スコリアや溶岩流など明らかにマグマ物質と判断できるものが噴出している場合はマグマ噴火と記述しました.マグマ噴火・マグマ水蒸気噴火のうち,噴火タイプの詳細(ブルカノ式噴火,プリニー式噴火など)が判明しているものについては,次の“噴火様式の詳細”で示しました.


噴火様式の詳細

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 研究論文・観測報告等により噴火様式の詳細が判明しているものについては,この項目中に記載しました.詳細な区分の例としては,ストロンボリ式噴火,ブルカノ式噴火,サブプリニー式噴火,プリニー式噴火,水蒸気プリニー式噴火などがあります.また,これらに加え,火砕流が発生した場合には「火砕流発生」,溶岩が流出した場合(溶岩ドームも含む)には「溶岩流出」と記しました.


堆積物の種類

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 噴火イベントによってもたらされた堆積物の種類を示しています.堆積物の種類としては,降下火砕物,火砕流,火砕サージ,溶岩流,溶岩ドーム,岩屑なだれ,泥流等があります.噴火記録が存在しても堆積物が確認されていない場合は「?」と記しました.ただし,噴火記録に降灰があったことが記されている場合には,堆積物が確認できなくても「降下火砕物」と記しました.海底火山の場合は,噴出物が海面を浮遊するのが確認されることがあります.この場合は括弧書きで「(海上浮遊軽石)」と記載しました.水に飽和した重力流による堆積物は泥流,土石流,洪水流,ラハールなど様々な名称がありますが,研究者によってそれぞれ定義が違っていたり,そもそも定義が曖昧なまま用いられていることも少なくありません.そのため,本データ集ではこれらを一括して「泥流」と記載しています.


岩質

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 噴火によってもたらされた本質物質の岩質を示しています.岩石名は,公表されている主成分全岩化学組成の分析値を用い,国際地学連合 (IUGS) の分類案(Le Bas et al.,1986; Le Bas & Streckeisen, 1991)に従って記載しています(下図).ただしこの分類案では,ノルム計算を行わないと玄武岩と流紋岩のアルカリ系列・非アルカリ系列の区分を示すことができません.本データ集では簡便化のため,玄武岩と流紋岩についてはKuno (1966)によるアルカリ系列・非アルカリ系列の区分線を用いてさらに分類を行い,アルカリ系列のものは「アルカリ玄武岩」「アルカリ流紋岩」,非アルカリ系列のものは「玄武岩」「流紋岩」と記載しました(下図).一方,全岩化学組成の報告が無いものについては文献中に記載されている岩石名を用い,備考欄にもその旨を記載してあります.マグマが噴出していない水蒸気噴火の場合は,岩質の記載はありません.

(下図)全岩化学組成を用いた岩石名の分類図

給源

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 噴火堆積物の給源火口の名称,あるいは給源火口があったと推定される地域の現在の名称を記してあります.山体崩壊イベントや泥流発生イベントの場合は,崩壊地形の名称,あるいは崩壊した山体の位置・部分(例えば,○○火山南斜面)を記してあります.


噴出量

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 噴火イベントによってもたらされた噴出物の量を,噴出量(見かけ km3マグマ噴出量(DRE km3で示しています.「噴出量(見かけ km3)」は,噴火による堆積物の見かけの体積値をあらわしています.噴火による堆積物は,その噴火に関連したマグマに起源を持つ「本質物質」と,噴火によって既存の山体や基盤岩が破砕・放出された「類質物質・外来物質」から構成されます.厳密にはそれらのうちの本質物質の量がマグマ噴出量を示すことになります.

 しかし,堆積物の本質物質,類質物質,外来物質の厳密な量比を求めることは容易ではありません.また,そのようなデータも一部の堆積物を除き,ほとんど報告されていません.そこで,本データ集ではマグマ噴火およびマグマ水蒸気噴火による噴出物を,100%本質物質で構成されているものと近似し,それをDRE(Dense Rock Equivalent)換算したものを「マグマ噴出量(DRE km3)」として示しています.なお,ごく一部の噴出物では本質物質とそれ以外の量比が求められており,それに基づいたマグマ噴出量が報告されているものがあります.その場合はそれらのデータを用いています.

 DRE換算体積とは,すべてのタイプの噴出物を溶岩と同じ比重にしたときに相当する体積を示します.火山噴出物は堆積物のタイプによって比重が異なっています.例えば,降下火砕物や火砕流では1 g/cm3程度,溶岩では2.5 g/cm3程度です.つまり,見かけの体積は同じでも,火砕物と溶岩では質量が異なることになります.たとえば上記の比重を仮定すると,見かけの体積で2.5 km3の降下火砕物は,DRE換算体積では1 km3となります.溶岩の比重はマグマの比重とほぼ同程度であるため,DRE換算体積はほぼマグマの体積に一致することになります.

 本データ集では,研究論文・観測報告等によって見かけの噴出量およびDRE換算のマグマ噴出量が報告されている場合には,それらのデータをそのまま収録しました.どちらか一方の値しか報告されていない場合は,溶岩の密度を2.5 g/cm3,火砕物の密度を1 g/cm3と仮定して換算したものを収録しました.

 なお,山体崩壊イベントの場合は,備考欄に崩壊堆積物の見かけの体積を表記しました.


噴火マグニチュード(噴火M)

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 噴火マグニチュードは,早川(1993)により提案された噴火の規模を表す指標です.噴火マグニチュード(M)は噴出物の質量から求められ,次の式により計算されます.

 M=log m -7   m=噴出物の質量(kg)

 本データ集で新たに噴火マグニチュードを求めたものについては,噴出物の体積を質量に換算する際に,溶岩の比重を2.5 g/cm3,火砕物の密度を1 g/cm3と仮定しています.噴火マグニチュードは,噴火の規模を統一基準で比較・検討する際に非常に便利な指標です.なお,噴火マグニチュードの算出には岩屑なだれ等の崩壊堆積物の体積は含まれません.


VEI(火山爆発指数)

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 VEI(Volcanic Explosivity Index:火山爆発指数)は,Newhall and Self (1982)により提案された爆発的噴火の規模を示す指標であり,世界中で広く用いられています.ただし,爆発的噴火のみを対象としているので,降下火砕物や火砕流をもたらした噴火のみに適用されます.溶岩流や溶岩ドームを噴出するだけの噴火には適用されません.VEIはもともと噴出量や噴煙柱の高度などの複数の要素を目安に決定される指標ですが,本データ集では,以下のように見かけの噴出量からVEIを決定しています.

VEI 0 1 2 3 4 5
見かけの噴出量(km3 0.00001未満 0.00001以上〜0.001未満 0.001以上〜0.01未満 0.01以上〜0.1未満 0.1以上〜1未満 1以上〜10未満

引用文献

Hayakawa, Y. (1985) Pyroclastic Geology of Towada Volcano. Bulletin of the Earthquake Research Institute University of Tokyo, 60, 507-592.

早川由紀夫(1993)噴火マグニチュードの提唱.火山,38,223-226.

早川由紀夫・小山真人(1997)1582年以前の火山噴火の日付をいかに記述するか―グレゴリオ暦かユリウス暦か?.地学雑誌,106,102-104.

Kuno (1966) Lateral variation of basalt magma type across continental margins and island arcs. Bulletin of Volcanology, 29, 195-222.

Le Bas, M. J. and Streckeisen, A. L. (1991) The IUGS systematics of igneous rocks. Journal of the Geological Society, London, 148, 825-833.

Le Bas, M. J., Le Maitre, R. W., Streckeisen, A. and Zanettin, B. (1986) A chemical classification of volcanic rocks based on the total alkali-silica diagram. Journal of Petrology, 27, 745-750.

中川光弘・松本亜希子・田近 淳・広瀬 亘・大津 直(2005)有珠火山の噴火史の再検討:寛文噴火(1663年)と明和噴火(1769年)に挟まれた17世紀末の先明和噴火の発見.火山,50,39-52.

中村俊夫(2001)放射性炭素年代とその高精度化.第四紀研究,40,445-459.

Newhall, C. G. and Self, S.(1982)The volcanic explosivity index (VEI): an estimate of explosive magnitude for historical volcanism. Journal of Geophysical Research, 87, 1231-1238.

Reimer, P. J., Baillie, M. G. L., Bard, E., Bayliss, A., Beck, J. W., Bertrand, C. J. H., Blackwell, P. G., Buck, C. E., Burr, G. S., Cutler, K. B., Damon, P. E., Edwards, R. L., Fairbanks, R. G., Friedrich, M., Guilderson, T. P., Hogg, A. G., Hughen, K. A., Kromer, B., McCormac, F. G., Manning, S. W., Ramsey, C. B., Reimer, R. W., Remmele, S., Southon, J. R., Stuiver, M., Talamo, S., Taylor, F. W., van der Plicht, J., and Weyhenmeyer, C. E. (2004) IntCal04 Terrestrial radiocarbon age calibration, 26 - 0 ka BP. Radiocarbon, 46, 1029-1058.

Stuiver, M. and Polach, H. A. (1977) Discussion: reporting of 14C data. Radiocarbon, 19, 355-363.


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