前期更新世の火山灰層
(寺林火山灰〜松内火山灰)

 盛岡以北の岩手山周辺地域の更新世前期( から更新世中期の初めにかけて)の火山灰が露出する代表的な地点の柱状対比図(土井,2000a)を下記に示す.


図1.更新世前期(一部中期を含む)の火山灰対比柱状図  土井(2000a)より引用  


図2.鮮新世の火山岩(溶岩)を不整合で覆う江刈内火山灰より上位の火山灰層
[西根第1中学校庭]
 
 前期更新世の火山灰層の特徴を,大上ほか(1980)および土井(2000a)に基づき,下位層から簡単にまとめた.
寺林火山灰
定義
大上ほか(1980).
模式地
岩手郡岩手町川口駅の東方500mの切り通し.
層序関係
古生界を直接覆う礫層を覆い,玉山火山灰に不整合で覆われる.
層相
石英に富む風化した火山灰層.模式地では水中堆積物として露出する.


玉山火山灰
定義 大上ほか(1980).
模式地 岩手郡岩手町川口駅の東方500mの切り通し.
層序関係 寺林火山灰を不整合で覆い,岩手川口火山灰に不整合で覆われる.
層相 風化した火山灰,軽石質火山灰,降下軽石および降下スコリアが認められる.下部は水中堆積と思われる.全層準で石英が含まれる.


岩手川口火山灰
定義 大上ほか(1980).
模式地 岩手郡岩手町川口駅の東方500mの切り通し.
層序関係 玉山火山灰を不整合に覆い,渋民溶結凝灰岩に不整合に覆われる.
層相 褐色風化火山灰中に,4枚の軽石層(下位より秋浦3〜1軽石,境田軽石)を含む.七時雨山起源の3枚の岩屑なだれ堆積物(沼宮内岩屑なだれ堆積物1〜3)を挟在する.


江刈内[エカリナイ]火山灰
定義 大上ほか(1980).
模式地 岩手町沼宮内,岩手町町営グランド.
層序関係 玉山火山渋民溶結凝灰岩を不整合に覆い,沼宮内火山灰に不整合に覆われる.
層相 風化した白〜灰白色細粒火山灰に,5枚の軽石層を介在する.内4層を鍵テフラとして,下位より高屋敷第4〜1軽石と命名されている.上位の高屋敷第3〜1軽石は褐色〜白色で斜長石・石英に著しく富む.最下位の高屋敷第4軽石は暗橙色で紫蘇輝石・普通輝石を主体とする.


沼宮内火山灰
定義 大上ほか(1980).土井(1990)により再定義.
模式地 岩手町沼宮内,岩手町町営グランド.
層序関係 江刈内火山灰を不整合で覆い,山崎火山灰に不整合で覆われる.
層相 白色軽石が優勢で,火山豆石を含む細粒火山灰層を伴う軽石層を介在する.3枚の軽石層が認められ,そのうち上・下部のものか鍵テフラとして,下位より苗代沢第2,1軽石と命名されている.全層準おいて石英を含む.


山崎火山灰
定義 土井(1990).
模式地 西根町.西根第1中学グラウンド.
層序関係 沼宮内火山灰を不整合で覆い,松内火山灰に不整合で覆われる.
層相 大上(1980)が定義した沼宮内火山灰の上部を,傾斜不整合で覆う水中堆積物を挟んで不整合関係で覆う.風化による粘土化が進行した褐色細粒火山灰で,スコリア層と火山砂層をはさみ,上部には石英を含む軽石層を含む.


松内[マツナイ]火山灰
定義
大上ほか(1980).土井(2000)により再定義.
模式地 再定義により玉山村好摩大台付近.
層序関係 山崎火山灰を不整合で覆い,外山火山灰に不整合で覆われる.
層相 白色火山灰を基底として,風化帯に介在される複数のスコリア質褐色火山灰層からなる.カンラン石が含まれること,また岩手山方面で厚くなるスコリア層が認められることから,一部の火山灰は岩手火山を給源とすると考えられている(土井,1990).同時に,七時雨山や八幡平方面にスコリアが粗粒化したり,角閃石・石英が認められる火山灰も存在することから,これらの複数の火山噴出物からなると考えられている.

鍵テフラの特徴
 各火山灰層からは対比に有効な複数の鍵テフラの存在が,大上ほか(1980),土井(2000a)によってまとめられている.各鍵テフラの特徴を地質層序に従って一覧表にまとめた.