図1.薬師岳−第3期噴出物の分布図
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薬師岳−第3期活動期はおよそ3.7千年前から2千年前の噴火ステージで,薬師岳スコリア丘(Yc),生出スコリア(Iw-OdS),薬師岳第3期溶岩(Y3)を噴出した.
この噴火ステージでは,薬師岳山頂部に薬師岳スコリア丘(Yc)が成長した.噴火様式としては,ベースサージの発生や極小規模なスコリア噴出,溶岩流出など比較的小規模な活動が主体であったが,末期には,噴出量が比較的大きなスコリア噴火(生出スコリア;Iw-OdSの放出)が発生し,その後,溶岩流(薬師岳第3期溶岩;Y3)を流出した.薬師火口から溢れ出した溶岩は北〜北東麓および不動平に達し,一部は山麓まで流下した.この噴火活動期の最終イベントとして,極小規模の珪長質なガラス質火山灰(岩手−不動平火山灰)が噴出した.
また,西岩手−大地獄谷における水蒸気爆発が複数回発生している.
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図2.薬師岳第3活動期の噴火活動の推移 伊藤(2002c)による
西岩手−大地獄谷周辺の水蒸気爆発と東岩手−薬師岳火山の噴火活動を併せた,薬師岳第3活動期の噴火活動の推移のモデル図.
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| 薬師岳スコリア丘(Yc) |
東岩手−薬師岳火山山頂部を形成する玄武岩質火砕岩(一部溶結)および溶岩が,薬師火口内壁に露出する.薬師岳標高点から北東部は薬師岳第4期噴出物の薬師岳溶結火砕岩類に覆われる.また,全体として未固結の1686年噴出物(刈屋スコリア)に覆われるが,山頂部の急傾斜部では転動や削剥によって失われたため,地表部に露出する.
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図3.薬師岳スコリア丘
暗赤〜赤黄色スコリア(一部溶結)と溶岩流からなる.最上部(写真中央上の標高点付近)は薬師岳第4期噴出物(薬師岳溶結火砕岩;Yu)に覆われる.
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| 生出スコリア(Iw-OdS) |
Inoue and Yoshida(1980)が定義した降下スコリア層.赤褐色から黄褐色の粗粒な降下スコリア層.全体として発泡度が良く風化変質の進行したスコリアからなるが,山体に近づくと比較的緻密な粒子が多く含まれ,山頂部では部分的に溶結する.粒度組成・構成物により少なくとも5ユニットに区分される.火山体近傍部では各ユニット間に有機質土壌などの時間不連続は認められないが.山体から離れると有機質土壌の挟在が明瞭になってくる.
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図4.東岩手−薬師火山山頂部に露出する生出スコリア
直径数10cmに達するスコリアからなり,一部は溶結作用によりスコリア粒子同士が固着している.
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図5.岩手山東部山麓の生出スコリア
山麓部に露出する生出スコリア.全体として風化作用が進行し,淡黄褐色を呈する.粒度組成および色調の異なる複数の降下ユニットからなる成層したスコリア層.
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| 薬師岳第3期溶岩(Y3) |
| 生出スコリアおよび薬師岳スコリア丘を覆い,刈屋スコリアに覆われる溶岩流.薬師火口から溢れ出した溶岩流で,薬師火口縁およびその周辺(不動平周辺)に分布するほか,一部は山麓部にまで流下している. |
図6.薬師岳スコリア丘と生出スコリアを覆う薬師岳第3期溶岩
薬師岳スコリア丘の表面を覆うように堆積した生出スコリア(写真で右下がりの斜面を作る暗赤褐色の溶結したスコリア)を,薬師火口から溢れ出した薬師岳第3期溶岩が不整合関係で覆う.
[薬師岳火口北縁部]
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図7.不動平に分布する薬師岳第3期溶岩
薬師岳スコリア丘南部斜面から不動平に流下する薬師岳第3期溶岩.写真の手前から左手(東側;8合目避難小屋側)側へカーブする,低平な丘陵が薬師岳第3期溶岩の溶岩ローブに対応する.
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| 岩手−不動平火山灰(Iw-fd) |
| 伊藤(1999b)が定義した.十和田-aテフラを,腐植質に富む土壌を挟んで覆う火山灰層.下部に層厚2cm程度の灰白色火山灰(粒径1mm以下の軽石混じり)をもち,その上位をスコリア質火山灰とやや粗粒なスコリアの互層が直接覆う.灰白色火山灰は,無色透明の火山ガラスが約30%を占める.この火山ガラスの形状は,軽石型〜比較的大きな気泡径を持つブロック型で,十和田-aテフラなどの広域テフラとは外形からも明瞭に区分される. |
図7.7合目付近に分布する珪長質ガラス火山灰(岩手−不動平火山灰)
層厚1cm足らずの白色ガラス質火山灰で,不動平周辺でのみ分布が確認できる.上部は細粒のスコリア・火山砂層に覆われるが,一部は二次堆積物と思われる.
[岩手火山薬師岳登山道7合目付近]
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