土石流
 
 土石流堆積物とは,土砂が水と共に流れ下る現象によって山麓部に堆積したものである.構成物の粒度組成や流下時の温度あるいは発生要因によって,土石流,泥流,火山泥流,熱泥流,ラハール,雪泥流などとも呼ばれる.火山活動に直接或いは間接的であるが関連性の高い発生要因としては,以下挙げられる.
  • 降下火山灰により山体表面が覆われ,比較的少量の降雨により発生
    • (三宅島 2000年噴火など多数)
  • 噴火活動によって山体の地形や植生状況が変化し,降水が新たな流路を形成する際に発生
    • (富士山1707年噴火,桜島大正噴火以降の活動,雲仙普賢岳1990年噴火など多数)
  • 積雪や氷河に覆われた火山体における噴火
    • (コロンビア,ネバドデルルイス火山1988年噴火)
    • (十勝岳 1988年噴火)
  • 山体を流下した地滑り堆積物・火砕流・岩屑なだれなどの河川や湖沼への突入
    • (浅間山1783年噴火,秋田焼山1997年澄川温泉の地滑りに伴う土石流)
    • (アメリカ,セントヘレンズ火山1980年噴火)
  • 水をたたえた火口の噴火およびそれに伴う火口湖の決壊
    • (インドネシア,ケルート火山1919年噴火)
  • 噴火活動により直接噴出
    • (特に地熱地帯などの水蒸気爆発の際に発生した事例が多い;久重火山1998年噴火)
 火山活動とは直接関与しなくとも,火山体斜面やカルデラ壁は,雨水などによる浸食作用を被る環境にあり,崩壊・崩落あるいは降水により土石流が発生し,山麓部には土石流堆積物などからなる緩斜面(火山麓扇状地)が形成されていく.
 また,富士山では,水分に富んだ雪崩(スラッシュ雪崩)が山体表層部の土砂を巻き込み,大規模な泥流被害が発生することが知られている(富士山では“雪代[ユキシロ]”と呼ばれる).岩手火山において同種の泥流の発生はごくまれであるが,噴火後に山体の地形や表層部の植生に変化があったときには,注意を払うする必要があるだろう.




図1.薬師岳火山東麓部で認められる土石流堆積物

薬師岳火山東麓で認められる巨大な礫(直径1m以上)を含む土石流堆積物.特異的に巨大な礫を含む.山頂部で薬師岳スコリア丘(Yc)が成長した薬師岳第3活動期に山麓に堆積した土石流堆積物であることから,噴火活動に関連するものと考えられる(伊藤,2002b).



図2.水蒸気爆発火山灰の堆積に起因する土石流
 中央部の白色の土石流堆積物は,大地獄谷火山灰1の上面を(部分的に浸食しながら)直接覆い,変質岩片および基質部にも変質粘土に富む.
[県道焼走り線工事現場]


図3.西岩手主火山体山麓の火山麓扇状地を作る土石流堆積物

 礫を含み砂〜泥質の基質を持つ土石流堆積物で,ラミナ構造が発達した流水堆積物の薄層互層を挟む.
[県道岩手山1号線工事現場]