薬師岳山頂部の開口割れ目



図1 薬師岳火山山頂部の地形判読および噴気・変質地域の分布
伊藤(1999d)より引用


図2.薬師岳火口縁の露頭写真
伊藤(1999d)より引用

(a)薬師火口南東縁より,妙高岳を望む.写真手前に開口割れ目の発達したベースサージ堆積物がある.写真奥のが妙高岳スコリア丘で写真正面の南東斜面は噴気活動 により変質作用を被っている.妙高岳スコリア丘の手前麓付近の石柱が立っているあたりが岩手山神社奥宮で,その右手の溶岩が一部露出している付近からも現在弱い噴気が存在する.
(b)プロック状に開口割れ目の発達したベースサージ堆積物.
(c and d) ベースサージ堆積物に発達する開口割れ目
 写真は割れ目内を充填していたスコリアを除去した状態で撮影

 東岩手火山山頂火口南東部の噴気地帯の南部では,ベースサージ堆積物は複数の開口型裂か系の発達により,ブロック状に破断されている.開口割れ目の開口幅は数cm程度で,開口部には薬師岳最新期の降下スコリア(1686年噴火による刈屋スコリア)がルーズに充填している.
 開口割れ目系の平均走向は,火口縁噴気地帯から岩手山神社奥宮噴気孔を経由して,現在でも地温が高い妙高山南東部の噴気変質地帯へと繋がる.また,ベースサージ堆積物の開口部を充填するスコリアの表面には,気相晶出したと思われる乳白色の変質鉱物が付着している.このことから,東岩手火山山頂火口縁で認められた裂か系は,噴気孔の一つとして働いた可能性がある.