急峻な山体を持つ成層火山に特徴的な活動様式

 成層火山は山頂部周辺の比較的急峻な部分と山腹〜山麓に至る比較的なだらかな部分に大別される.この様な地形の相違は,山頂火口中心部は火口から噴出した火山弾やスコリアが十分に冷却する前に堆積することで降下直後に溶結する割合が高いこと,あるいは中心火道からの熱的影響による硬化の影響が想定され,一方山麓部にかけては元々未固結の堆積物が集積することと,山頂部の浸食によって形成された二次堆積物が堆積する事との相乗作用によってなだらかな地形が形成されると考えられている(荒牧,1979等).
 玄武岩質〜玄武岩質安山岩の成層火山においては,局所的ではあるが火砕物の作る安定角(およそ33度)よりも急峻な斜面がつくるられることがある.このような急峻で標高の高い火山体地形は,一般的に以下のタイプの噴火災害の要因となりうる.

 1)降下火砕物が急峻な斜面上に降下したために安定して定置できず,火砕流となって斜面を流れ下る(富士山:Yamamoto et al.,2005).
 2)山頂火口形成された溶岩湖が火口縁の崩壊により山腹を流れ下り,小規模な火砕流に移化する(アレナル火山[コスタリカ];Alvarado and Soto, 2002)
 3)成層火山表層部が崩壊し,岩屑なだれとして流下する(岩手火山:伊藤ほか,1999).
 4)山体に積雪が認められる火山体においては,雪代(スラッシュ雪崩)と呼ばれる降雨による湿った積雪が地表の未固結堆積物を巻き込み山麓部に流れ下る.(富士山,1983年等)




図1.急峻な成層火山における噴火災害要因の概念図

 溶岩湖流出による火砕流発生についてはAlvarado and Soto(2002), 急斜面への降下火砕物の流下による火砕流についてはYamamoto et al., (2005),表層堆積物の崩落による岩屑なだれについては伊藤ほか(1999)に基づき簡略化した.


図2.現在の岩手火山の傾斜分布
赤;33度以上,黄;30度以上,水色:20度以上を示す.
この地図は国土地理院発行10mメッシュデータ(火山標高)を用いて(承認番号;平17総使,第705号),数値地図ビューアにより作成した.
 降下物が安定して定置することが難しい傾斜角33度以上の斜面は,東岩手-薬師岳火山の北東部に比較的顕著に認められる.東岩手−鬼又火山や西岩手−主山体には谷頭部に急崖を持つ浸食谷が発達している.