| マグマ噴火との関連 |
| −西岩手火山の水蒸気爆発と東岩手火山のマグマ噴火との関連について− |
| 岩手火山では,西岩手火山の大地獄谷における水蒸気爆発と東岩手火山の薬師岳火山のマグマ噴火が,相次いで発生した事例が存在することが報告されている(伊藤,1999a). 大地獄谷周辺地域にでは,十和田-aテフラ(西暦915年)の上位で2層準に水蒸気爆発噴出物(T1, T2層)の存在が確認される.上位のT2層は1919(大正7)年の水蒸気爆発噴出物で,下位のT1層はおよそ14世紀の水蒸気爆発噴出物で,いずれも大地獄谷での噴火によるものである(図2;伊藤,1999a).下位のT1層は,薬師岳に近づくとその上部に,細粒のスコリアを含む火山灰(T1-bユニット)を伴う(図3).T1-bユニットは細粒のスコリアおよび火山灰からなり,斜交葉理構造や気泡痕などが認められるマグマ噴火により発生した火砕サージ堆積物と判断される. |
![]() 図1.西岩手−大地獄谷付近の火山灰柱状図 (伊藤,1999c)より引用
露頭観察地点の記号は図3による.水蒸気爆発による粘土質火山灰T1-aが,スコリア・火山砂質のT1-bに直接覆われる.
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![]() 図2.大地獄谷における水蒸気爆発により放出された粘土質火山灰.
変質岩片が混じる黄白色粘土質(伊藤,1999aのT1-a)の直上に,暗灰色のスコリア混じり火山灰が覆う(T1-b).T1-bには斜交葉理や,気泡痕,植物痕が認められ,火砕サージ堆積物と判断される.なお,写真下部の黄白色細粒軽石層(To-a)は十和田-aテフラである.
[御苗代湖から薬師岳に至る登山道沿い.図4のA地点]
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| 火山灰の層厚分布(図4)から,T1-aは大地獄谷付近から噴出したと判断されるが,一方,T1-bは東岩手−薬師岳火山から噴出したことと判断される.両者は直接上下に重なって堆積しており,堆積物の特徴からは,明瞭な時間間隙の存在は確認できない.従って,地質学的には両者は一連の噴火活動で,大地獄谷における水蒸気爆発と東岩手−薬師岳火山におけるマグマ噴火がほぼ連続して発生したと推測されている(伊藤,1998). |
![]() 図3.T1-a,b 火山灰の分布 (伊藤,1999c)より引用
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東岩手−薬師岳火山の噴火活動は,山麓のテフラ層序において比較的静穏な時期を挟む4つの活動期に区分されるが,14C年代を基に西岩手火山における水蒸気爆発の発生時期と対比すると,水蒸気爆発は薬師岳火山の活動期にほぼ対応しており,西岩手火山と東岩手火山の活動は連動する傾向があると指摘されている(土井,1999a). このように山体に活発な地熱地域を伴う活火山において,地熱地域の活動とマグマ噴火の活動が同時期に発生する事例は,岩手火山以外では久重火山においても認められている(Itoh et al., 2000) |
![]() 図4.東岩手(薬師岳火山)の噴火と,西岩手(大地獄谷)における噴火年代の比較 (土井,1999a)より引用
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