岩屑なだれ発生直後の小噴火
岩手火山において約7千年前の山体崩壊直後に発生した小規模な噴火活動
−平笠岩屑なだれ堆積物を覆う火砕サージ堆積物−

 岩手火山で約7千年前に発生した平笠岩屑なだれ堆積物が,火砕サージ堆積物および火山灰に覆われることが確認された.山体崩壊直後に小規模なマグマ噴火が発生したと考えられる(伊藤,1999c).


図1.平笠岩屑なだれ堆積物(暗赤褐色)を覆う,火砕サージ堆積物火山灰
起伏に富む平笠岩屑なだれ堆積物の表面を火砕サージが直接覆っている.
[県道焼走り線道路工事現場]


図6.(a)代表的な地点の柱状図
   (b)図5のスケッチ図
   (c)火砕サージ堆積物およびその上位の火山灰の粒子構成物
(伊藤,1999)より引用 

[堆積物としての特徴]
 堆積構造の異なる少なくとも3ユニットからなる.それらは下位より,細かなラミナ構造が発達する火砕サージ堆積物と火山豆石を含む火山灰(局所的にvesiculated tuff)および,ラミナ構造が不鮮明な細粒〜中粒の火山灰である.
 これらは起伏に富んだ平笠岩屑なだれ堆積物の直上を覆い,流水による二次堆積物に覆われることから,岩屑なだれの発生直後に放出されたと考えられる.
 粒子構成物においては,含有量は少ないが褐色ガラス片が認められること,上位のユニットほど変質岩片の含有量が減少し,新鮮なスコリア・鉱物片が増大することから,この噴火活動にはマグマ物質が関与していた可能性が高い.

[噴火活動の経緯]
 平笠岩屑なだれ発生直後の噴火活動は以下の経過をたどったと考えることができる.
 熱水変質した火山体および山体に貫入していた玄武岩質〜安山岩質マグマの一部が,山体崩壊に伴う急激な減圧によって爆発し,最下位のユニットを堆積させ,引き続いて,玄武岩質〜安山岩質マグマが小規模な噴火活動を発生した.